はじめに
「IoTを導入したいが、何から始めればいいのかわからない」──これは多くの現場担当者から聞かれる声です。IoTは導入の進め方次第で効果が大きく変わります。本記事では、工場や施設にIoTを導入するためのステップと、事前に準備しておくべきポイントを分かりやすく解説します。
ステップ1:現場の課題を洗い出す
まず最初に行うべきは、「なぜIoTを導入したいのか?」という目的の明確化です。以下に代表的な課題と、それぞれの解説を示します。
- 毎日人がしている同じ作業を自動化したい
- 例:決まった時間に温度を測る、ドアを開閉する、紙に記録をつけるなど、日常的に繰り返されている作業はIoTによって大幅に省力化できます。人手不足対策や作業負担軽減に直結します。
- 毎日人が目視確認している作業を自動化したい
- 例:機器の動作状況やランプの点灯確認など、人が現場に足を運んで確認している作業を、センサーによって常時監視・記録することで、効率化と人的ミスの削減が期待できます。
- 異常が起きたときにすぐに通知を受け取りたい
- 例:水漏れ、異常温度、設備停止など、トラブルが発生した際に即時通知されることで、被害拡大を防止できます。アラート機能付きのIoT機器やクラウド連携が活躍します。
- 入退室の履歴を残しておきたい
- 例:誰がいつ施設を出入りしたかを記録し、トラブル時の対応やセキュリティ強化に役立てます。特に無人施設や夜間運用がある場合は有効です。
ここで重要なのは、「IoTを導入すること」自体が目的にならないようにすることです。あくまで課題を解決するための手段として位置づける必要があります。
ステップ2:スモールスタートでPoC(概念実証)を行う
いきなり全体に導入するのではなく、まずは一部の業務やエリアで小さく試すことが成功の鍵です。これをPoC(Proof of Concept)と呼びます。
たとえば:
- 会議室1室にだけスマートロックとセンサーを設置
- 製造ラインの特定装置だけに電流センサーを設置
- ゴミ箱1台に満杯センサーをつけて通知システムと連携
この段階で、実際にデータが取れるか、操作が簡単か、現場の負担にならないかを確認します。成功事例ができると、社内での理解も得やすくなります。
ステップ3:全体導入に向けた計画を立てる
PoCで得た知見をもとに、本格的な導入計画を立てましょう。以下のような視点で整理するとスムーズです:
- 対象範囲(全施設・全装置 or 一部から段階的に)
- 導入する範囲を明確にすることで、予算や工数をコントロールしやすくなります。最初から全体に導入するのではなく、リスクを抑えて徐々に広げる方式も効果的です。
- 利用目的(遠隔監視・自動制御・省エネなど)
- 導入の目的を明確にしないと、途中で設計がぶれてしまいます。「遠隔から状態を把握したい」「エネルギーコストを削減したい」など、具体的なゴールを定めましょう。
- 必要なセンサー・通信手段・ソフトウェア
- 利用目的に応じて、最適な機器やサービスを選定する必要があります。センサーの精度、通信の安定性、クラウドとの連携方法なども検討のポイントになります。
- 運用・保守体制(誰が見るか、誰が対応するか)
- データを確認する人、異常時に対応する担当者など、運用体制を明確にしておくことが重要です。また、故障や更新時の保守フローも事前に決めておくことでトラブルを未然に防げます。
- 費用と回収の見込み(ROI)
- 導入コストに対して、どれくらいのコスト削減や生産性向上が見込めるかをシミュレーションしておくと、社内説得や稟議もスムーズに進みます。定量的な効果が見えると投資判断がしやすくなります。
ステップ4:社内・現場の理解と教育を進める
現場で運用するのは、IoTに詳しくない従業員であることが大半です。そのため、社内教育やマニュアル整備は導入効果を最大化するうえで欠かせません。
また、導入によって「作業が楽になる」ことを伝えることで、現場の協力が得られやすくなります。逆に、理由やメリットが伝わらないまま導入すると、使われずに形骸化するケースもあるため注意が必要です。
ステップ1のその前に…信頼できるパートナーとの連携が最重要
IoTの導入は、単にセンサーを取り付けるだけでなく、システムの設計・通信の安定化・セキュリティ対策・クラウド連携など、技術的な要素が複雑に絡みます。
そのため、導入実績があり、現場にも寄り添ってくれる信頼できるパートナーの存在が重要です。当社では、IoT導入支援を多数手がけており、PoCの設計から導入・運用保守までを一貫してサポートしています。
「まずは相談したい」「一部分から試してみたい」といったご要望にも柔軟に対応可能です。お気軽にお問い合わせください。
まとめ
IoT導入は、正しいステップで進めれば、現場の業務改善や効率化、省人化に大きく貢献します。まずは小さな改善から始めて、段階的にスケールアップしていくことが成功のカギです。
次回は「IoT導入時によくある失敗例とその回避法」についてご紹介します。
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