IoTを活用した「見守り」サービスの進化:離れていても“気づける”安心を

IoT

はじめに

高齢者の一人暮らしや、介護施設での夜間の見守り、在宅介護中のご家族の不安──こうした“見守り”に関する社会課題が深刻化するなかで、IoTを活用した非接触型の見守りサービスが注目されています。

「何かあってから」ではなく、「異変の兆候に早く気づく」ために、IoTは新たな役割を果たしています。

この記事では、IoTによる見守りの仕組みや、どんな場所・家庭に導入されているのか、そして今後の可能性についてわかりやすく解説します。


見守り×IoT:どんなことができる?

■ 日常動作の“変化”をセンシング

IoTによる見守りでは、室内に設置された複数のセンサーを活用し、対象者の「日々の行動パターン」を記録・分析します。たとえば、

  • 人感センサーが一定時間感知しない=動いていない
  • ドア開閉センサーが長時間反応していない=外出していない
  • 温湿度センサーが急変=エアコンの故障や体調不良の兆候 といったように、目に見えない小さな変化をデータで捉え、早期に気づくことが可能です。生活リズムを数日~数週間単位で学習することで、「いつも通りか、違うのか」が明確になります。

■ 異常を検知したら自動通知

生活パターンに基づいた“異常”を検知した場合、システムは即座に関係者に通知を行います。通知先は主に以下のように設定できます:

  • 家族のスマートフォンにアプリ通知またはメール送信
  • 介護施設スタッフの専用端末や管理システムに連携
  • 自治体や支援機関の見守り拠点に通知 これにより、「気づいたときには遅かった」という事態を防ぎ、対応の初動を早めることができます。通知のレベルも「注意」「要確認」「緊急」などで段階的に設定可能です。

■ 映像や音声を使わない“プライバシー配慮型”が主流

IoT見守りでは、カメラやマイクを使わずに安心を提供する方式が広がっています。これは高齢者本人や家族のプライバシーへの配慮が非常に重視されているためです。

  • カメラなしでも、複数のセンサーで「生活の流れ」を把握できる
  • 音声を使わなくても、「移動がない」「トイレの使用が遅れている」などは検知可能 そのため「見られている」「録音されている」というストレスを与えることなく、自然な暮らしを守りながら安全を提供できるのが利点です。

■ 定常データの蓄積とAI分析

IoTシステムは、日々取得される生活データをクラウドに保存し、AIが分析することで**“兆候”を見逃さない仕組み**を構築します。たとえば:

  • 過去2週間の行動と比較して、起床時間が遅れている
  • 食事の回数が減っている(台所の出入り回数が減少)
  • 夜間のトイレ回数が急増している こうした情報を元に、AIは「軽度の異常」として早期通知したり、一定期間続いた場合に「重大な兆候」としてアラートを出すことができます。これは単なる“センサーアラーム”ではなく、“傾向の変化”に基づいた予測型の見守りです。

導入シーンと活用事例

独居高齢者の見守り(在宅)

一人暮らしの高齢者にとって、緊急時に助けを呼べない状況は大きなリスクです。IoTを活用することで、

  • 室内の各所に設置されたセンサーが、活動の有無や温度変化などを常時記録
  • 動きが長時間ない場合や、普段と異なる行動があった際に家族へ通知
  • 台所やトイレなど特定の場所への出入りを時間帯ごとにモニタリング といった仕組みにより、遠方に住む家族でも**「必要なときだけ確実に気づける」見守り**が実現します。見守られる側も「監視されている感覚がない」ため、尊厳を保った安心が得られます。

■ 介護施設での夜間見守り

夜間帯はスタッフの数が限られ、巡回も最小限になりがちです。そこで、

  • ベッドに取り付けたセンサーで、離床・転倒をリアルタイム検出
  • トイレへの移動や戻りをモニタリングし、長時間戻らない場合は通知
  • 人感センサーで深夜の室内徘徊を検知し、ナースステーションにアラート これにより、スタッフの身体的・精神的負担を軽減しながら、事故や体調急変への対応スピードを上げることができます。施設側にとっては「見守りの質を落とさずに少人数で対応可能」という大きな利点です。

■ 障がい者福祉施設や子どもの見守り

IoTの見守り技術は、障がい者福祉や育児の現場でも拡大しています。

  • 自閉症スペクトラムの利用者など、言葉では異常を伝えにくいケースでも、行動変化を非接触で把握
  • 子ども向けには、園内の出入りやお昼寝中の体動・室温・体温をセンサーで検知
  • 学童施設では、保護者アプリとの連携で入退室時間を自動通知 これにより、見守りスタッフの確認負担を減らし、事故リスクの低減と保護者の安心感を同時に提供できます。見守りの“多様化”に対応できるのがIoTの強みです。

技術的なポイントとシステム構成

■ 使用センサー

見守りにおいて用いられるセンサーは、主に非接触型で生活行動を把握できるものが採用されます。

  • 人感センサー:人の動きを検知。リビングやトイレなどに設置し、動きがない時間を監視します。
  • ドア開閉センサー:冷蔵庫や玄関、トイレなどの出入りを検知し、「普段と違う利用状況」を察知します。
  • ベッド圧センサー:就寝中の離床・未就寝・転倒などの異常を検出。夜間見守りに有効です。
  • 温湿度センサー:室内環境の変化を記録し、空調の異常や体調異変の兆候を補助的に捉えます。

■ 通信手段

センサーで取得したデータをリアルタイムに送信するため、用途や設置場所に応じた通信方式を選択します。

  • LPWA(LoRa、SiGNなど):低電力・長距離通信が特徴。電源の取りにくい現場や独居高齢者宅に最適。
  • Wi-Fi:既存の家庭内ネットワークが利用可能。室内中心の設置に適しています。
  • LTE/5G:通信エリアが広く、画像・音声などの重いデータにも対応。モバイル対応や屋外用途で有効です。

■ 可視化・通知システム

取得したセンサーデータはクラウド上に集約され、Webまたはアプリのダッシュボードに表示されます。

  • 家族や施設スタッフは、直感的なUIで「いつ・どこで・どんな動きがあったか」を確認可能。
  • 通知設定により、異常や生活リズムのズレが発生した際には、メールやアプリでリアルタイム通知。
  • 施設向けには複数人の状態を同時に管理できるビューや、CSV出力・履歴管理機能も搭載可能です。

■ AI分析基盤

転倒兆候や睡眠の質の変化、生活リズムのズレなどをもとに、早期警告やケアの判断支援も行えます。

単にデータを集めるだけでなく、「いつもと違う行動パターン」を学習・蓄積して異常を察知するAIロジックを搭載。

継続的な学習により、個人ごとに「通常状態」を把握し、より精度の高い検出が可能になります。

  • 使用センサー:人感センサー、ドア開閉センサー、ベッド圧センサー、温湿度センサーなど
  • 通信手段:LPWA(LoRa、SiGN)、Wi-Fi、LTE、5G など設置環境に応じて選択
  • 可視化・通知システム:クラウド上のダッシュボードにデータを集約し、家族や施設スタッフが確認。異常時には通知機能で即座に対応
  • AI分析基盤:蓄積データを元に「いつもと違う状態」を自動検出するロジックを搭載

今後の展望

  • より高精度な異常検知:バイタルデータ(心拍・呼吸)との連携による予兆検出の進化
  • 見守り×音声・表情解析:AIによる感情変化の検知や孤独感の可視化
  • 自治体との連携:地域包括ケアシステムと統合し、“街ぐるみ”の見守りネットワーク

まとめ

IoTによる見守りサービスは、人手不足の介護現場や、家族の不安の軽減に大きく貢献しています。

ただ「見張る」のではなく、“見えないところでそっと見守る”やさしさと安心感を提供できるのが、IoTならではの特長です。

技術の進化とともに、見守りのかたちはこれからさらに広がっていきます。

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