はじめに
IoTは正しく導入すれば大きな成果を上げられる一方で、導入に失敗して「使われなくなった」「費用ばかりかかった」というケースも少なくありません。この記事では、実際によくあるIoT導入の失敗パターンと、その背後にある原因を整理し、失敗を避けるためのポイントを解説します。
失敗例1:目的が不明確なまま導入した
**「とりあえずIoTを入れてみたが、何に使うか曖昧だった」**という例は非常に多く見られます。目的がはっきりしないと、設置後に「で、これで何ができるの?」となってしまい、結局使われなくなるパターンに陥ります。
▶ 対策:まず現場の課題を明確にし、IoTの役割を具体的に設定すること
IoTは「導入すること」がゴールではなく、あくまで「課題を解決するための手段」です。現場での手作業の削減、設備の見える化、セキュリティ強化など、具体的な目的とKPIを設定することが成功の第一歩です。
失敗例2:現場の協力が得られなかった
「現場で使われるはずのIoT機器が、実際には使われていない」というのもよくあるパターンです。導入を上層部だけで進めてしまい、現場とのコミュニケーションが不十分なまま導入すると、操作に不安を感じたり、現場の作業フローに合わなかったりして、定着しません。
▶ 対策:初期段階から現場を巻き込み、教育・説明の場を設けることが重要
現場の意見を取り入れながら機器の選定や運用方法を決め、導入時にはハンズオン形式の研修や、実際の操作マニュアルの配布など、使いこなせる体制づくりが必要です。
失敗例3:PoC(試験導入)なしで一気に全体導入
効果が未知のまま大規模導入してしまい、結果的に使えない・思った効果が出ないというリスクもあります。
▶ 対策:小さく始める「スモールスタート」で実証実験を行い、効果を確認してから拡大を検討
1台のセンサーや1区画だけの導入など、小さく始めてデータの取れ方や現場の反応を確認しましょう。小さな成功事例を積み重ねることで、社内の理解も得やすくなります。
失敗例4:機器・通信・クラウドがうまく連携しなかった
センサーやネットワーク、クラウドサービスが別々のメーカーや仕様で設計されていると、連携がうまくいかず、データが取れない・表示されない・通知されないといった技術トラブルにつながります。
▶ 対策:全体設計の段階で、システム全体の連携を見据えて製品を選定し、信頼できるベンダーと連携することが重要
「このセンサーが出すデータは、このクラウドでどのように表示されるのか」といった全体像を把握したうえで選定を行いましょう。実績のあるトータルサポート可能なパートナー企業の活用も有効です。
失敗例5:セキュリティ対策が甘かった
IoT機器は外部と通信するため、セキュリティリスクもあります。初期パスワードのまま使い続けたり、ネットワーク分離をしていないと、情報漏洩や外部からの不正アクセスの危険があります。
▶ 対策:セキュリティを考慮した設計、機器ごとのアクセス制限、定期的なファームウェア更新
基本的な対策として、初期パスワードの変更、通信の暗号化、ネットワークの分離、アクセスログの記録などが挙げられます。また、セキュリティを想定した設計・運用体制を導入前から検討しておくことが重要です。
まとめ
IoT導入の失敗は、多くが「計画不足」「関係者の不在」「運用設計の甘さ」に起因しています。逆に言えば、導入前にしっかり準備を行い、現場と連携し、段階的に進めることで、失敗リスクを最小限に抑えることができます。
次回は、成功するための「IoT機器・システムの選び方とチェックポイント」についてご紹介します。
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